【オリヴィエ・メシアン:二つのキリスト教音楽に於ける比較考察
『Trois petites liturgies de la presence divine -神の顕在の三つの小典礼-』(1943-1944)
及び『La transfiguration de notre seigneur Jesus-Christ
-我が主イエス・キリストの変容-』(1965-1969) (57ans-61sans) par O.Messiaen】
『三つの小典礼』を追っている毎日ですが、ここ数日少々風邪で調子が今一つです。
そういう時に心を鎮静化させるのに最も聴きたくなる作品は、
この『我が主イエス・キリストの変容』です。
(全14曲〈1er Septieme7曲×2eme Septtieme 7曲〉、演奏時間およそ100分
混声合唱と7人の楽器ソリスト、大オーケストラによる)
『三つの小典礼は』大変ポジティブに「神の顕在」を高らかに詠い上げる作品であり、
「惑星規模のマクロな視点」から「昆虫規模のミクロな視点」まで、
様々な生き物の「時間」と「存在論」が作曲者自身による創作テクストにて語られています。
一方のこの『我が主イエス・キリストの変容』のテクスト部分は、
メシアン本人の手記に寄りますと、以下のような記述があります。
「注意深く作曲者[註:メシアン]によって選ばれた、瞑想の基盤として
奉仕するラテン語テクストのモザイク」
即ち前者(『三つの小典礼』)は「神を賛美する」作品であり、
後者(『イエス・キリストの変容』)は「神について深く瞑想する作品」だと
思われます。
次に音楽的特徴を挙げます。
前者(『三つの小典礼』)は、「M.T.L旋法」や「オンド・マルトノ」の使用が
大変メシアン的であるという事、
後者(『キリストの変容』)は、「アジア的打楽器群」が充実しており、
鳥たちのさえずり(複数の)の描写もオケに散見られる事でしょう。
こうした点は、更に後期のオペラ『Saint francois d’assise -アッシジの聖フランチェスコ-』
(1975-1983)(67ans-75ans)の、先駆け的なオーケストレーションのようにも思えます。
また、両者の共通点は、共にテクストを作者自ら創作しているという点でしょう。
両作品とも『聖書』からの引用、またトマス・アクィナスによる『神学大全』からの
引用もある事から、
メシアンはこうした神学を深く修め、それを咀嚼して楽曲創作と一体化していった事が
読み取れるかと思います。
『三つの小典礼』の仏語テクストは、わたくしは概ね下訳を作りましたが、
『キリストの変容』の方は、テクストがラテン語という事で、
未だ大意を掴むところまでには至っておりません。
今は『三つの小典礼』にかかりっきりではありますが、将来的には、
是非この『キリストの変容』にも深く踏み込んで行きたく思っております。
赤坂樹里亜