去る12月14日には恩師の還暦記念コンサートが「ティアラこうとう 大ホール」にて開催されました。私ごとですが、このコンサートの2日前に急遽身内が亡くなったため、本来ならば慶事的な席はご遠慮するのがマナーだったのかも知れませんが、しかし何としても伺いたいとの強い想いがあり、且つ葬儀日程とも重ならなかったため、この日は力を振り絞ってティアラこうとうに伺わせて頂きました。
私とVc.の宮澤先生との関係性は音楽高校時代の副科チェロの師匠でいらしたことです。
私の高校に入学したての1年生の頃は、週に1回ほど副科チェロのレッスンがあり、この際に上級生が先にレッスンを受けるタイムテーブルで、私は次のコマでしたので、レッスン室前の長椅子で先のレッスンが終わるのを待っているという形でした。
ある日、いつも通り上級生のレッスンは始まっているだろうか?とレッスン室の小窓を覗いた事がありました。その日はどうもサボり癖のある上級生は出席していないようでしたが、宮澤先生はそんな事は意にも介さず、空いた時間をフルに活用されて寸暇を惜しむが如く、もの凄い勢いでご自身のチェロに向かって練習されていたお姿を拝見しました。
私はこの時、「この道で一流になる人の生き様とは、こういうものなのだ!」と音楽高校新入生心に感銘を受けた記憶があります。
そのため、今般の「還暦コンサート」のプログラムにご自身が執筆された「特に天才でも努力家でもない私ですが、」と綴られた挨拶文は、いかにもご謙遜だという事がありありと伝わってきます。
そして今般のコンサートの趣旨ですが、「宮澤先生とクラリネットの中川哲也先生の還暦記念」であるととともに、宮澤先生の主宰される楽団「ウッドランドノーツ」の創立30周年の節目にも当たるそうです。私は音楽高校入学時から宮澤先生からお誘い頂き、ウッドランドノーツの定期演奏会に毎回伺っていました。そうでなければ、管楽器や弦楽器専攻でない私がオーケストラを身近で学べる機会は他には無かったでしょう。先達に色々と育てて頂いた事に大きな感謝を感じます。そうした「年上の方々がやっていらっしゃる楽団」と認識していたウッドランドノーツが、今では私よりも若手の楽団員さんたちに一部世代交代されている様も、何か感慨深いものがありました。終演後楽屋にご挨拶に伺いましたが、若いウッドランドの方々からお菓子のお裾分けを頂いたりして、とても嬉しく思いました。
こうした「自分史の想い」の凝縮された記念コンサートでしたので、無理をしてでも伺えました事を大変有難く思いました。最後に一つだけ申し訳なく思いますのは、楽屋に伺った際に余り晴れやかな顔で伺えなかった事ですね。喪中の暗い顔だけはしてはならないと肝に銘じておりましたが、未だ未だ未熟者です。どうかご容赦頂けますと幸甚です。
総じて、先達の様々なお導きによって今の私が存在しており、その事に大きな感謝を感じます。また高校時代の恩師と今でもご縁が続き、尚且つ記念コンサートに伺えました事は、何にも替え難い財産ですね。
クリスマスも過ぎましたが、どうぞ皆様方のもとにもご多幸ありますようお祈りしております。
2021年12月26日 赤坂樹里亜 拝 15h39