『Trois petites liturgoes de la presence divine -神の顕在の三つの小典礼-』
(1943-1944)の作曲者自身によるテクスト創作研究の伏線を辿ろうと、
『Poemes pour mi -ミの為の詩-』(1936)全9曲を翻訳してみました。
しかしながら、『三つの小典礼』の伏線を見つけるべくして行った行為によって、
思わぬ場所に出てしまった、そんな印象があります。
暗中、トンネルを掘り進んでいったら、予期せぬルートに出てしまったという
不可思議なおののきでもあるかも知れません。
メシアンの歌曲創作は、この『ミの為の詩』(1936)を経て、
『大地と空の歌』(1938)と続きます。
(これは息子パスカル誕生の翌年、メシアン30歳の年です。)
この全6曲の曲集の第1曲目も、「ミ(クレール・デルヴォス)」への
献呈の意が書き込まれており、
タイトルも「ミと過ごす長い期間 (我が妻の為に)」と在ります。
1945年には、いよいよ妻クレールの健康状態が悪化してゆく中、
新作創作の着想を、「トリスタン伝説」から得ます。
これを形にしたものが、Sop.とPf.による『ハラウィ』(1946)です。
副題に「愛と死の歌」とあるように、ストーリーは
“ピルーチャという女性が恋に落ちるも命を落とし、別の惑星(ほし)に
生まれ変わり、恋する人と結ばれる”、というものです。
つまり、『ハラウィ』はメシアンの言う処の「トリスタン三部作」に
分類される作品です。
「トリスタン三部作」とは、「トリスタンとイズー伝説」から着想を得て
創作された三つの作品であり、
『トゥーランがリア交響曲』、『五つのルシャン』、そしてこの『ハラウィ』が
含まれます。
わたくしとしましては、こうした「男女の恋愛の機微」を描いた作品を
視てゆくのは、どうにも敷居が高く、今まで敬遠していた節が在りました。
ところが『三つの小典礼』のテクストに繋がってゆく伏線を探そうとして、
思いも寄らず、この「トリスタン三部作」の一つである『ハラウィ』に繋がってゆく
『ミの為の詩』と対面した訳です。
ややもするとメシアンは、こうした「悲恋」を経て、神への信仰を尚深め、
自分自身の「父性」を自覚してゆき、
後期には「壮大な」宗教作品を書くに至ったのかも知れません。
わたくし自身は、そろそろこの部類の作品を敬遠せず、
こうした「トリスタン三部作」とも
向き合ってゆく期が熟してきたのかも知れません。
トンネルは意外な場所へと掘り進まれて来たようです。
Julia.A
Le 9 Juillet 2013 12h46