1933年に創作されつつも、メシアンの死後15年後の2007年にDurand社から
出版された作品です。
その前年に、ヴァイオリニストである妻、クレール・デルヴォスに献呈された
『主題と変奏』(1932年)(Vn.とPf.の為の)の後続作品と思われます。
作品の概観は、「ソナタ的プロセス」を持った楽曲構造であり、
冒頭のPf.で奏でられるテーマは、『L’Ascension -キリストの昇天-』(1932年)
第2曲目の「天国を望む魂の穏やかなハレルヤ」冒頭の素材が再利用されています。
『L’Ascension -キリストの昇天-』(1932年)(全4曲)自体も、
始めはオーケストラ編成で書かれますが、翌年(1933-1934)に掛けて
オルガン曲として編曲されています事は、昨年くらいに書かせて頂きました通りです。
(しかし第3曲目だけは、原曲と異なるオルガンの技巧作品へと差し替えられています。)
こうして視てみますと、この『L’Ascension -キリストの昇天- 第2曲』の素材は、
少なくとも3度は異なった編成にて奏されている事になります。
メシアンにとり、深い思い入れのある主題なのでしょうか。
(余談ですが、わたくしのホームページの表紙に加工して使用しております楽譜は、
この『キリストの昇天 No2.(オーケストラ版)』冒頭です。)
尚、わたくしにとりましては「トリスタンとイズー伝説」を読み解いてゆく事は
やや敷居が高いですが、(* わたくし鈍感で、男女の心の機微が解らないもので…)
この『ヴァイオリンとピアノの為の幻想曲』(1933)の
ソナタ形式的プロセスにおけるアナリーゼをしてゆく事は
自分の専門であり、こちらは非常に肩の力を抜いて行えるかと思います。
「トリスタン伝説」作品から更に派生し、クレールへの献呈作品を追ったところ、
意外にもオルガン作品(『キリストの昇天』)へと繋がりました。
オルガン作品概観研究は、幸いにも昨年2012年の研究課題でしたので、
昨年の蓄積を生かす事ができますし、その上、
得意分野のソナタ形式アナリーゼにも繋がってきました。
トンネルは、更にどんどん掘り進められていくようです。
赤坂樹里亜
2013年7月13日 22h22