Olivier Messiaenがフランスのアビニョンにて、シェークスピア研究家の父Pierre Messiaen(1883-1957)と、女流詩人Cecile Sauvage(1883-1927)との間に生を受け、今日で108年目となります。
御母堂Cecileは、Olivierを体内に身ごもっている期間に、『L’ame en bourgeon -芽生える魂-』(1908)を執筆しており、その詩集には、以下の文言が在ります。
「私は、私の知らないはるかな音楽のために痛む」
つまり、我が子の将来を予見したというのです。
O.Messiaen自身、以下の様に語っています。
「実際、私はこの母性の詩集が果たした決定的な役割をいつも信じてきましたし、だんだん強くそう思うようになってきました。
サルヴァドール・ダリは好んで突飛な生き方をする人ですが、しばしば「子宮内記憶」について語っています。それほど極端なことを言わないにしても、私は子供というのは懐胎の時から存在するものだと信じています。(中略)
懐胎の最初の瞬間から、子供は自分自身、将来の芸術家や将来の殺人犯、将来の労働者や将来の共和国大統領です。」
(『オリヴィエ・メシアン その音楽的宇宙』クロード・サミュエル著 P11 L4-L9)
こうした決定論は、恐ろしい事ではないか?と問いかけたインタビュアー、クロード・サミュエルに対して、O.Mesisaenはミツバチの巣箱を例にして説明しています。
即ち、女王蜂は生まれながらにして産卵を目的として女王蜂としてそこに在るのだと。
クロードは問います。
「人間にはミツバチよりも少しの自由選択の余地があるのではないか?」
O.Messiaen
「人間には自由選択の余地があること、自分の人となりを修正する事ができるという事には同意しましょう。」(『同書』P12 L1-L2)
上記の様に回答しながらも、この後はやはり聖母マリアの「受胎告知」の例を用いて、語ります。
O.Messiaen
「子供の人となりというのは、子宮内生命のときから形成されるのです。母と子との間には絶えず交流があり、子供は外部の情感を採り入れる事が出来る。母親が音楽を聴くと、母胎内の子供が動くということ、そしてその音楽の種類によりその反応が異なるということはお聞きでしょう。私の妻の姪の赤子は、生まれる前、その母親が現代音楽を聴いていると激しく動き、バッハだと静かになった。似た現象が聖書にも出てきます。
“聖母訪問”の不思議な出来事です。」(『同書P12』 L3-L9
“聖母訪問”については、.Messiaen曰く、聖母マリアが洗礼者ヨハネを懐胎したエリザベートを訪問した時、胎児の洗礼者ヨハネは、母胎内で体位を変えて跪いたのだと言います。
そこでエリザベートは聖母に言います。
「汝は全ての女の中で祝福されたる者、汝の体内の実[註:イエス]も祝福されし者」
こうしてO.Messiaenは、自身の誕生をインタビュアーに語るとき、「ルカによる福音」の受胎告知の話を用い、その個所からできたカトリックで伝統的な祈りである「天使祝詞」との関連をここで語ったのでした。
O.Messiaenによれば、ヒトを含む被造物は、神の御意志と御計画により、生まれながらにミッションを持っているという事でしょうか。
個人的には受洗後の初めてのO.Messiaenの生誕日を迎え、過去毎年とは異なった視点から、氏の生誕日を祝う事となりそうです。
末筆ながら、O.Messiaenがこの世に生を受けた12月10日に、心からの祝辞を述べたいと思います。
Julia.T.A
Le 10 dec. 2016 13h12