Rachmaninoff《Vocalise》の、云わば「心地良いメランコリー」に内包される要素として、
一説によるとグレゴリオ聖歌《怒りの日》の歌い出しの動機が用いられているという話を、過日目にしました。
そこで《怒りの日》を本日試聴してみたところ、なるほど確かに歌い出しの個所「ド、シ、ド」
(註:移動ド唱法による階名唱法にて記述)の動機が確認できます。
この動機(モティーフ)は、《Vocalise》中の至る所にモティーフ展開されて登場しますので、
「Rachmaninoffが好んだグレゴリオ聖歌からのモティーフ操作による楽曲」とする説に、
何ら矛盾点は無いように思います。
次に個人的に調査してみたいと感じる点は、以下のように感じます。
恐らくロシア人のSegrei Rachmaninoff(1873-1943)はロシア正教を国教とする
地域性の中で暮らしたと思われますので、「ロシア正教とグレゴリオ聖歌との関連」を
識らなければなりません。私の中では未だ不明点です。
ヴァチカンを中心とした欧州のカトリック文化、即ち西方教会に於ける諸文化は
約4年間学んできた途中経過地点で、ほんの少し垣間見えてきたところではありますが、
東方教会の思想や典礼に於ける音楽の用いられ方を識ってゆくには、
これから調べてゆく必要性があります。
Rachmaninoffに関しては、どのくらい研究してゆくかは、自分の中では
未だ未だ未知数ではありますが、この2作品を聴いて「今現在」思うところは以下の事です。
1.)教会旋法にて書かれたグレゴリオ聖歌の動機を用いているが、
Rachmaninoffは調性優位の主題を創作し、そうした旋法寄りでない機能和声の中、
浮遊するような不安的局面を中間部に作り出し、巧みにグレゴリオ聖歌に於ける
旋律断片を動機として展開している。
2.)機能和声を用いて理知的に進行する中にも、ロシア民族音楽的情緒を感じ取れる作風となっている。
今思う事は、取り敢えずこのような事でしょうか。
Olivier Messiaenともまた異なった世界観ですが、興味深く拝聴しました。
Julia.T.A
le 11 avril 2017 12h16