《神の現存の三つの小典礼曲》(1943-44)を考えようとするとき、
その前段階に創作された作品にも目を向けようという意思が働きます。
そうした時系列の中でMessiaenを視た時、《三つの小典礼曲》の
5年前からの作品に少々着目してみたいと思います。
≪1939年≫
《Les corps glorieux -栄光の御体-》(1939) オルガン作品 全7曲
サブタイトル『Sept Visions breves de la Vie des Ressuscite』 pour orgue
『蘇りし者の七つの短い幻影』オルガンのために
≪1940年≫
《Quatuor pour la fin du temps -時の終わりのための四重奏曲-》(1940)
pour violon, clarinette en si bemol, violoncelle, et piano
ヴァイオリン、b管クラリネット、チェロ、そしてピアノのために
≪1941年≫
《Chœurs pour une Jeanne d’arc -ジャンヌ・ダルクのための合唱-》
≪1942年≫
《Musique de scene pour un œdipe -エディプスのための楽劇-》
≪1943年≫
《Vision de l’Amen -アーメンのビジョン-》pour deux pianos 二台ピアノのために
そして≪1943-44≫《Ttois petites liturgies de la prsence divine -神の現存の三つの小典礼曲-》と並びます。
そこで上記の《Les corps glorieux(1939)》に付された7つの作品の
サブタイトルを俯瞰してみたいと思います。
Ⅰ. Subtilite des corps glorieux -栄光の御体の精密さ-
Ⅱ. Les Eaux de la grace -水の恩恵-
Ⅲ. L’ange aux parfums -香りの天使-
Ⅳ. Combat de la mort et de la vie -死と生の戦い-
Ⅴ. Force et agilite des corps glorieux -栄光の御体の力と俊敏さ-
Ⅵ. Joie et clarte des corps glorieux -栄光の御体の歓びと光-
Ⅶ. Les Mysteres de la Sainte Trinite -聖三位一体の神秘-
この7つの作品には、やはり『新約聖書』や『ミサ典礼書』などからの
御言葉の引用があります。
この点は数週間前に前述した《L’Ascension -キリストの昇天-》(1933-34)の
タイトル配置構造は、同一だと感じられます。
そして《L’Ascension》が未だユダの裏切りによって捕縛される前段階で
作品を閉じているのに対し、この《Les corps glorieux》は
サブタイトルから、「処刑後のキリストの復活」を象徴した作品と憶測します。
つまり《L’Ascension》の続編的な作品とは受け取れないでしょうか?
こうした『聖書』やトマス・アクィナス『神学大全』からの引用は、
《Meditations sur le Mystere de la Sainte Trinite –聖三位一体の神秘への
瞑想》(1969)にも若干みられるようですが、1969年の後期作品の、
音楽語法の変遷はこうした中期作品
とは異なり、関連性を見つけてゆくのにもう少し時間がかかりそうです。
従ってこの『聖書学的側面』からMessiaen作品を視た時、
《三つの小典礼曲》との着想法の共通点が見られるこの
《Les corps glorieux》に焦点を当てる事も有効かも知れないと愚考するものです。
取り敢えずは、今日はここまでにしようと思います。
Julia.A
Le 16 octobre 2015 12h07